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路傍の晶

第8回

フローリストムラカミ  店主 村上 則次さん

* 店主の村上さん *
* 店主の村上さん *
  好きな花は秋桜だと、村上則次さんはいう。「けっして派手さはないんですけどね、野に咲いているとハッと目を引くつつましい美しさがある。ほかの花とは違う、そのちょっとした美しさに惹かれるんです」

 村上さんが勤めていた会社を辞め花業界に足を踏み入れたのは、25歳のときのことだ。「じつはそれ以前まで、植物にさほど興味はなかった」と、彼は笑う。「独立したかったんです。両親と兄が銀行員だった反動か、僕はサラリーマンではなく自分で会社を経営したかった。そのために大学も経済学部に入りましたし、企業会計のゼミも受けていました。ただ、独立するまえにいろんな世界を見ておきたかったので、自分のなかで3年間と決めて就職したんです」
* 豊島園通りに面した店舗 *
* 豊島園通りに面した店舗 *
国内大手の信販会社に入社すると、彼は全国でもトップクラスの営業実績を積み上げていく。扱う額も一千万円をくだらない。責任も日に日に増していった。だがどんなに優秀な成績を収めようとも、軸は揺るがなかった。忙しない日々を過ごすなかで、様々な企業の仕組みや金銭の動き、仕事の要領などを学び、吸収した。仕事に対する貪欲な姿勢は総て、目標とする独立に向けての布石だったのである。

 経営者を志す村上さんと花を結んだのは、将来を約束した妻の存在だった。退社し1年間のフラワーショップでの修行を経たのち、彼は戦前から代々受け継がれる村上生花店の看板を背負うことになった。
* つつましい美しさを湛えた花 *
* つつましい美しさを湛えた花 *
スーツを脱ぎネクタイを外し、代わりにエプロンを掛けて箒を手にする毎日は新鮮だった。時間を見つけては花の図鑑に目を通し、自らの手で実際に触れることで知識を蓄えていく。朝7時には市場に足を運んで競り落とし、また生け花の教室に通い感性を磨いた。漠然としたイメージをかたちにするため、色彩学も学んだ。

「毎日がすごく楽しいですね。花を仕入れて水揚げし、並べ、アレンジし、販売する。ときには配達もする。その総てに楽しさがある。アレンジしたものをお客さんに買ってもらったり喜んでもらえたときは、とくにうれしい。僕自身がフローリストとして認めてもらえるようになったんだと、感じられるから」


 フローリストムラカミの四代目となって今年で14年目となる彼は、「お客さんの半歩先にいることをつねに心掛けている」という。「たとえば花のアレンジにしても、誰もが見たことのあるような平凡なデザインではつまらない。かといって、奇抜すぎるアイデアでは観るひとを置き去りにしてしまう。ひとつの場所に留まらず、進みすぎない程度に先にいる、その“ちょっと”の意味って大きいと思うんですよ」
  
 正月、とあるカフェの依頼を受け、オリジナルの門松をつくった。松や青竹、柳を用い、かがり火のイメージで仕上げた門松の斬新なデザインは、まえを通る歩行者の足を止め、溜息をつかせた。派手さはない。がしかし村上さんのアレンジは、観る者を心地よくし、彼らのティータイムに華を添えた。つつましい美しさを湛えて。

取材・文◎隈元大吾

フローリストムラカミ
住所:〒179-0074 練馬区春日町1-12-1
アクセス:西武池袋線豊島園駅より徒歩7分
都営大江戸線練馬春日町駅より徒歩7分
電話番号:03-3999-1341
ファックス番号:03-3999-1356
E-mail:murakami878@yahoo.co.jp
営業時間:9:30~20:00
定休日:木曜 (祝祭日、季節行事の際は営業いたします)

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