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特集!まちを楽しむ

園芸の街、駒込で生まれた「ソメイヨシノ」

2008/08/27

「ソメイヨシノ」の発祥地・駒込(旧.上駒込村染井)にスポットをあて、ソメイヨシノのルーツを大特集!
 江戸時代中期から明治時代にかけて、旧・上駒込村染井(現・豊島区駒込)は“園芸の街”として栄えていた。当時、染井通り沿いには10を超える植木屋が軒を連ね(下図)、その活躍は多方面にわたっていたという。
 そもそもこの地域は、田畑が広がる農村地帯であったが、染井通り周辺には、柳沢家下屋敷(現・六義園)や藤堂家下屋敷などの大名屋敷も点在。近郊に住む農民は、大名の庭造りを担当し、植木や花の生産、管理などを行って生計を立てていた。それがしだいに植物の専門家として植木屋化していったと考えられている。
 それぞれの屋敷が互いに競いあうように造園していた幕末から明治初め頃、染井の植木屋が最初に売り出したとされる桜の品種が「ソメイヨシノ」だ。ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの雑種だが、その交配を誰がしたかは謎のままである。当初、名もない新種に“吉野”と名付けたのは、桜の名所「奈良吉野山」にちなんでのこと。しかし、吉野山の桜は山桜であったので混同を避けるために、明治33年、上野公園の桜の調査をしていた藤野寄命によって地名の“ 染井”が入り「ソメイヨシノ」と命名されたという。
近吾堂板の江戸切絵図「巣鴨・染井・王子辺図」嘉永5年(1852)・近吾堂蔵板
近吾堂板の江戸切絵図「巣鴨・染井・王子辺図」嘉永5年(1852)・近吾堂蔵板
江戸切絵図のなかでも、もっとも「切絵図らしい」とされる尾張屋板のもの。「染井・王子・巣鴨辺絵図」嘉永7年(1854)・尾張屋清七板
江戸切絵図のなかでも、もっとも「切絵図らしい」とされる尾張屋板のもの。「染井・王子・巣鴨辺絵図」嘉永7年(1854)・尾張屋清七板
江戸時代後期の上駒込村染井の景観を描いたもの。「染井植木屋」〈江戸絵本土産〉・歌川広重画
江戸時代後期の上駒込村染井の景観を描いたもの。「染井植木屋」〈江戸絵本土産〉・歌川広重画
江戸の景勝地と解説が書かれたもの。〈絵本江戸土産〉(10編10冊)嘉永3年(1850)~慶応3年(1867)・一立斎広重・二世広重画
江戸の景勝地と解説が書かれたもの。〈絵本江戸土産〉(10編10冊)嘉永3年(1850)~慶応3年(1867)・一立斎広重・二世広重画
 染井の植木屋のなかで、最も活躍したとされているのが、江戸時代前期にこの地に居住した伊藤伊兵衛だ。享保4年(1719)の『東都紀行』によると、伊兵衛はもともと染井通り南側一帯に広がる下屋敷、藤堂家(伊勢国津藩主)に出入りした「露除」(植物を冷たい露から守る人)だったという。同家の庭掃除などをしながら、不用になった植物・草木類を自分の庭に運び、栽培していくうちに植物の世界にのめりこんでいったようだ。
 しだいに、伊兵衛は植木屋として有名になり、その名は世襲されていった。
 伊兵衛を名乗ったなかでも、伊兵衛三之烝と政武の親子が、江戸園芸の先駆者的存在として高い評価を受けている。その最大の理由は、自らが執筆し発行した「園芸書」を今に遺していること。父親の三之烝は、元禄5年(1692)に、躑躅・皐月の図解書『錦繍枕』を著し、息子の政武は、草花類を収録した図譜『草花絵前集』などを世に送りだしている。いずれも実用的な内容で、のちの時代に活躍した植木屋や研究者たちに多大な影響を与えた。
染井の植木屋たちの菩提寺だった駒込の「西福寺」。
染井の植木屋たちの菩提寺だった駒込の「西福寺」。
西福寺境内にある「石造如意輪観音菩薩像」(1670年造立)。染井の居住者が組織する講集団により造立。
西福寺境内にある「石造如意輪観音菩薩像」(1670年造立)。染井の居住者が組織する講集団により造立。
西福寺境内にある「石造六地蔵像」(1655年造立)。染井の居住者が施主となり造立されたもの。
西福寺境内にある「石造六地蔵像」(1655年造立)。染井の居住者が施主となり造立されたもの。
西福寺境内にある伊藤伊兵衛の墓。東京都指定史跡。
西福寺境内にある伊藤伊兵衛の墓。東京都指定史跡。

伊兵衛家の著作

構成の植木職人も参考にした貴重な「園芸書」

 伊兵衛三之烝と政武父子が手がけた『園芸書』。写真1は、父・三之烝による躑躅・皐月の図解書『錦繍枕』で、当時約300品種ほどあった躑躅・皐月の花形を図示したもの。写真2は、息子・政武による草花の図譜『草花絵前集』。草花の絵、花の色、開花時期に重きを置いている。写真3は、政武の著書『地錦抄(じきんしょう)シリーズ』の一部『増補地錦抄』(全8冊)、『広益地錦抄』(全8冊、)『地錦抄附録』(全4冊)で、西福寺に伝わるものだ。染井の園芸について熱心に研究されていた先々代のご住職が購入されたもの。『地錦抄』は、これを含めて計3セットが豊島区に存在し、いずれも貴重な資料となっている。

染井の植木職人をめぐる「駒込」史跡めぐり

駒込の染井通り周辺には、園芸街・染井の面影を残す史跡が点在。植木職人に思いをはせて、巡ってみよう。

ソメイヨシノの調査・研究活動について聞きました。

ソメイヨシノと伊兵衛の関連性は?

秋山 伸一さん
豊島区立郷土資料館
学芸員
秋山 伸一さん
豊島区立郷土資料館
学芸員
 ソメイヨシノの発祥地や起源について、これまで多くの人たちにより検証作業が行われ、「染井の植木屋である、伊藤伊兵衛がソメイヨシノを生み出したのではないか?」という仮説が立てられたこともありました。
 しかし、植物栽培および植物研究に功績を残した伊兵衛の著作に、ソメイヨシノに関する記述や植物画が見られないことから、現段階では、伊兵衛とソメイヨシノとの直接的な関連性はないと考えられています。
 また江戸時代、上駒込村染井のほかに、現在の台東区や墨田区といった江戸の中心部からやや離れた地域にも植木屋が点在し、園芸センターとして栄えた街が都内に多く見られます。染井が“園芸の街”として各方面から注目されるようになったのは、この地域の研究がほかよりも一歩早く進んだためという理由があげられます。
「豊島区立郷土資料館」には染井の植木屋に関する資料がいっぱい。
「豊島区立郷土資料館」には染井の植木屋に関する資料がいっぱい。
◇豊島区立郷土資料館◇
  豊島区西池袋2-37-4 
  TEL.3980-2351
  http://www.museum.toshima.tokyo.jp

池袋周辺お花見スポット

池袋周辺にはソメイヨシノをはじめ、桜が堪能できるお花見スポットが点在。
今年のお花見も池袋周辺で楽しもう!
自由学園明日館
3月下旬から4月上旬に桜の見学会とイベントを開催。
幻想的な夜桜も最高!
西池袋2-31-3  TEL.3971-7535
池袋駅メトロポリタン口より徒歩5分
東京芸術劇場
芸術を堪能したあとは、劇場前の池袋西口公園でお花見を。
西池袋1-8-1   TEL.5391-2111
池袋駅西口より徒歩2分
目白庭園
しだれ桜が圧巻の本格的日本庭園。
都会とは思えない豊かな自然が広がる。
目白3-20-18  TEL.5996-4810
JR目白駅より徒歩5分
面影橋
約100本のソメイヨシノが咲き誇る神田川沿い。
毎年花見客で賑わう名所。
高田1丁目 
都電新川線面影橋駅下車
豊島区立雑司が谷旧宣教師館
アメリカ人宣教師・マッケーレブの旧居でお花見を。
庭のソメイヨシノが見事。
雑司が谷1-25-5  TEL.3985-4081
都電新川線雑司ヶ谷駅より徒歩7分
六義園
3月中旬より「しだれ桜と大名庭園のライトアップ」を開催予定。
夜桜を楽しもう。
文京区本駒込6-16-3  TEL.3941-2222 
JR・東京メトロ南北線駒込駅より徒歩7分
ホテルメトロポリタン
桜の眺めが楽しめる2Fの日本料理「花むさし」。
美味しい料理と景色を堪能。
西池袋1-6-1  TEL.3981-1111(代)
JR池袋駅メトロポリタン口より徒歩1分
椿山荘
三重塔など史跡が点在する椿山荘の庭園。
春にはソメイヨシノが美しく開花。
文京区関口2-10-8  TEL.3983-1140 
東京メトロ有楽町線江戸川橋駅より徒歩10分

公園&春のイベント情報

西池袋公園
(西池袋3-20-1)
池袋駅西口より徒歩5分
区内最大の公園。園内には石彫の噴水やバラ園があり、訪れる人の心を癒してくれる。春には花見客で賑わう。
東池袋公園
(東池袋3-14-1)
東池袋駅より徒歩5分
ソメイヨシノのふるさと、駒込から引っ越してきた桜が植えられている公園。明るく広々とした園内でお花見が楽しめる。
中池袋公園
(東池袋1-16-1)
池袋駅東口より徒歩5分
豊島公会堂(みらい座いけぶくろ)の前に広がる憩いの場。お花見はもちろん、ちょっとした休憩に最適な公園。
染井吉野桜記念公園
(駒込2-2-1)
詳細・TEL:3942-0679
4月6日(日)に「染井よしの桜まつり」を開催。
模擬店や物産展、子ども広場など、楽しい催しが盛りだくさん!
第30回春の交通安全運動と染井吉野桜まつり

会場:巣鴨駅前ほか
3月29日(土)に巣鴨駅周辺で開催。
交通安全を呼びかけるパレードなどを実施。

この情報の出典 「まるごと池袋マガジン 池袋15’」

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